人工授精のリスク、デメリットは?
主に男性不妊を原因とした治療に採用される人工授精
人工授精は、男性の精子を採取し、人工的に女性の子宮内に精子を注入して妊娠を目指す方法で、主に男性不妊を原因とした治療に採用されています。
人工授精による不妊治療は特別な方法だと思っている人もいるかもしれませんが、平成14年度の時点で年間66,000人が人工授精を行っているのが現状であり、現在では不妊治療の中でも一般的になってきた治療法ということができます。
人工授精には、特に大きなリスクはなく、稀に痛みや出血が伴うことがあるというくらいだそうですが、軽度なものや妊娠後の注意点があるので、事前の知識として知っておく必要があります。
人工授精では排卵誘発剤を使用するため、それによる副作用の発生が一番大きなリスクであるといえます。
特に卵巣過剰刺激症候群という症状には要注意が必要です。
卵巣過剰刺激症候群(OHSS)とは、親指大(3~4cm)ほどの大きさである女性の卵巣において、その中の卵(卵胞)が過剰に刺激されることによって、卵巣が膨れ上がり、腹水や、ときに胸水などの症状が起こることをいいます。
この卵巣過剰刺激症候群では、血圧の低下や肝機能低下、腎機能低下が引き起こされることがあります。
人工授精の回数が増えるほど、排卵誘発剤の使用回数も増えるので、それだけ卵巣過剰刺激症候群になるリスクが高まることになります。
この卵巣過剰刺激症候群が発症するかどうかは、その個人の体質が大いに関係しており、一般的には、排卵誘発による刺激に卵巣が敏感に反応する人が起こりやすくなるといわれています。
具体的には卵巣の反応性がいい年齢(18~35歳)、痩せ型、卵巣に多数の卵胞が存在している、血中のエストラジオールが高値を示しているなどの条件が当てはまる方が発症しやすいとされています。
また、人工授精を行うと、その時に使用した器具に付着した菌が原因で感染症にかかることが稀にありますので、人工授精後に体調が悪いときや体に異変を感じた際には、不妊治療を受けている病院に連絡する必要があります。
さらに、人工授精では、妊娠高血圧症候群になるリスクが高くなるといわれています。
人工授精を行ったときは双子や三つ子といった多胎妊娠の確率が上がるため、それによる母体の負担増加で妊娠高血圧や妊娠高血圧腎症になる確率が高まってしまうのです。
人工授精において障害を持った赤ちゃんが生まれるリスク
2016年現在、人工授精と障害の関係性を医学的に証明した研究は見当たりません。
ただし、2012年にオーストラリアの研究チームが「体外受精と顕微授精を合わせた不妊治療による妊娠の方が、自然妊娠よりも、障害を持つ赤ちゃんが生まれる確率が1.28倍高かった。
その内訳は体外受精は1.07倍、顕微授精は1.58倍」という研究報告をしています。
しかし、この研究報告における因果関係は明確にはなっていません。
人工授精は、精子を直接子宮内に注入する以外には、自然妊娠と同じように妊娠に至るため、人工授精であっても自然妊娠であっても、生まれる赤ちゃんへのリスクは変わらないのではないか、というのが一般的な考え方となっています。
赤ちゃんへの障害のリスクは、年齢の上昇に大きく影響されるため、不妊治療には若いうちに早めに取り組む必要があります。
人工授精のデメリットとしては、まず、妊娠率が低いということがあります。
人工授精の妊娠率は、平均で約20%程度と低いため、最初の1~2回で妊娠に成功するケースは少なく、4~5回挑戦してようやく妊娠判定されるというケースが多くなっています。
次に、人工授精は自由診療になるため保険適用がなく、全額自己負担になってしまうため、治療費がどうしても高額となってしまいます。
ただ、人工授精は、保険適用外ですが「医療費控除」は適用されますので、1年の間に人工授精を繰り返しても「最大10万円」の自己負担で済みます。
さらに、人工授精は、たとえ10回撃沈しても挑戦を続けるべきと考える医者もいますが、通常は、5回ほど行って妊娠判定が出ないと「体外受精」のステップアップが提案されてしまいます。
人工授精は痛みや出血、リスクも多くありませんが、人工授精に関わらず、妊娠に伴うリスクは年齢の上昇に合わせて高まっていくため、もし「不妊かも?」と不安になったときは、まずは婦人科を受診するのが良いと思います。
そして、人工授精を行うにあたってのリスクやデメリットが気になる人は、医師にも相談して、総合的に判断する必要があると思います。