卵子提供のリスク、デメリットは?
卵子提供によるリスクやデメリットをよく理解しておく必要があります。
卵子提供は、特に高齢出産の場合は若い女性の健康でフレッシュな卵子を使用するので格段に妊娠率が上がるため、人工授精や体外受精を経ても中々子宝に恵まれない方においては、次の手段として卵子提供を考えている方も多いと思います。
さらに最近ではハリウッドセレブが卵子提供によって子供を授かったりということがあったりして、以前に比べてかなりその認知が拡大されてきました。
しかし、卵子提供による妊娠出産は非常に多くのリスクを内包しているので、安易に卵子提供による体外受精を選択することはお勧めできません。
まず、卵子提供によるリスクやデメリットをよく理解しておく必要があります。
妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などの合併症の発生率が著しく上がります。
まず、卵子提供のリスクとしては、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などの合併症の発生率が著しく上がり、特に妊娠糖尿病だと8倍ぐらいに増えるというデータもあり、注意が必要です。
妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)とは、むくみ、蛋白尿や高血圧などいずれか1つの症状が現れたもので、特に高血圧に注意が必要となっています。
卵子提供を含む体外受精を行うご夫妻は、年齢が高くなりがちであり、そのため、高齢出産になることが多くありますが、高齢出産の場合、高血圧になる可能性は20歳代の約1.8倍とされています。
加齢による内臓機能の低下、さらに妊娠という生体の変化が起こることが、妊娠中毒症が多く発生する原因であるといわれており、妊娠中毒症を防ぐために、早期発見および食事・栄養指導を受けることが大切といわれています。
また、体重管理にも気を付けることが大切になります。
また、妊娠糖尿病とは、妊娠の影響で発症する糖代謝異常の一種であり、妊娠中に初めて発見・発症したもので、糖尿病には至らない軽度のものを指します。
妊娠中に判明した糖代謝異常が重度の場合は、「妊娠中に診断された明らかな糖尿病」として区別され、また、妊娠前に糖尿病と診断されていた人が妊娠した場合は「糖尿病合併妊娠」と呼ばれています。
妊娠糖尿病の発症率は約12%で、今まで糖尿病とは縁がなかった人でも発症することがありますが、妊娠糖尿病は軽度なので産後には元通りになるものではあります。
しかし、産後に糖尿病を発症しやすくなるともいわれているので、注意が必要な病気です。
母子両方の身体へのリスクが多くなります。
また、卵子提供のリスクとして、早産が多くなることや分娩時の出血がとても多くなるなど、母子両方の身体へのリスクが多くなります。
その他、卵子提供では、複数個の受精卵を移植することになるので、多胎妊娠が発生しやすくなります。
多胎妊娠とは2人以上の胎児を同時に妊娠している状態をいいます。
ただ、複数個の受精卵を移植する理由は、妊娠確率を上げるためなので、卵子提供だからというものではありません。
そのため、移植する受精卵の個数を1個にして、多胎妊娠を防ぐという方法も可能です。
また、日本産科婦人科学会においては、体外受精において子宮に戻す受精卵の個数に関して、原則1個にする指針を出しており、例外として、35歳以上か、2回以上続けて妊娠しなかった患者は、2個まで戻すことを容認しております。
その他、卵子提供のデメリットとして、治療費にお金がかかるというものがあります。
例えば、アメリカで卵子提供による体外受精を行った場合、旅費や滞在費、治療費、仲介会社へ払う費用諸々を考えると、その治療費は約250~300万円はゆうに超えてしまいます。
もちろん保険は適用外であり、さらに、これだけの費用を払っても妊娠できないという場合もあるのです。
このように治療費にお金がかさんでしまい、出産後の育児にかけるお金が無くなっては意味がなくなってしまいます。
あくまでもゴールは出産ではなく、その後の子供が元気に育ってくれるかどうかなのですから、事前にしっかりとパートナーと話し合って、本当に大事なものはなんなのか、優先順位はなんなのかを結論付けることが大切だと思います。
また、リスクとはいえないかもしれませんが、卵子提供したことを子供にどう伝えるかという問題もあります。
今後は遺伝子検査が今まで以上に身近になるため、そのような時、遺伝的な親子関係を意図せずに子供が知る場合もあるといえます。
伝えるか伝えないかはそれぞれの判断とはなりますが、その答えを出さないまま、ないがしろにし続けるという事だけは止めたほうがいいと思います。
現在、海外では、卵子提供や着床前診断などに関する法律や学会の方針がきちんと整備され、日本に比べ、社会全体での理解も進んでいます。
日本国内でも理解あるクリニックも増えてきておりますが、日本の体制が海外に追いつくまでにはまだ時間がかかりそうです。
そのような状況ですが、卵子提供のリスクを知り、出来る限り答えを出してから治療に望むようにしましょう。